あの花が咲く頃、君に会いにいく。
恐らくずっと気になっていただろう疑問をやっと投げかけてきた楓に、微笑みながら振り返る。



「…ううん」


「でもそれじゃ…」


「わかってる。わかってるよ…。だから楓はもう帰って。お別れはここがよかったの。私たちの教室で、ちゃんと楓とさよならをしたかった。だから最後にここに来たいってお願いしたの」


「なに、言ってんだよ…。俺は最後まで早乙女に付き合うと言った。だから…」


「もういいの!もう、いいから…っ。今までありがとう。楓がいてくれて、すっごく助かった。この49日間ずっと楽しかった。だから…」



楓が私の言葉を遮るようにそっと抱きしめてきた。



「嘘をつくな。本当は、最後の未練もうわかってるんだろ…?」


「な…っ、どうして…」


「わかるに決まってる。ずっと一緒にいたんだから」



…本当はもう、気づいていた。私が最後に何を願ったのか。



「最後の未練を早く解消するんだ。今ならまだ間に合うだろ?」


「…ダメ。できない。言えない…」


「早乙女!」



楓が体を離すと、真っ直ぐに私を見つめてきた。
< 120 / 129 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop