あの花が咲く頃、君に会いにいく。
「俺は、おまえが好きだ」


「……え?」


「だからおまえのことを祓うなんて、俺にはできないんだよ。好きな女にはちゃんと成仏して生まれ変わって欲しい」


「ま、待って…。え、今好きって…」


「ああ、俺は早乙女のことが好きだ」


「…っ!」



…嘘だ。だって…。



「私…もう死んでるんだよ?楓のそばにいられないんだよ…?」



だから必死に自分の気持ちに蓋をして、違うと言い聞かせてきた。


認めてしまったら、きっとこの想いは楓を苦しめてしまうだけだから。



「私みたいなもう死んでて未来がない霊なんかじゃなくて、ちゃんと生きてる人を好きになって。そして、幸せになってよ」



叶わないってわかりきっていたから、だから私はこの道を選んだんだ。


…好きな人が、幸せでいられる未来を過ごすために私はいらないから。



「…俺は、馬鹿みたいに明るくて一生懸命に前だけを向いているところや、本当は弱いところとか、ふとした時に見せる儚い横顔とかそういう早乙女の全部が好きなんだ。恋なんてしないと思っていたのに、いつの間にか俺の中で早乙女の存在が大きくなっていった」


「でも、私は…」
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