あの花が咲く頃、君に会いにいく。

またね

「ここは…」



目を開けると、どこを見ても真っ白な空間にただ一人、ぽつんと突っ立っていた。



「やあ、私は天使様。君は死んでしまったんだよ、覚えてる?」



振り向くと、白のワンピースを着た黒髪ロングの二十代くらいの女の人がにこっと笑みを浮かべて立っていた。



「…死んだ?」


「そう。車の前に飛び出した少年を庇って、ね」



記憶がフラッシュバックのように脳を駆け巡り、うっと頭をおさえる。



「…そうか、僕は死んでしまったんだ…。あ、あの男の子は無事だったんですか!?僕が助けたあの子は…」


「ああ、無事だよ。軽い擦り傷だけで済んだ。その代わりに君が死んでしまったというのに、その子の心配をするなんてとんだお人好しだねぇ」


「僕には大切な妹がいるから、体が勝手に動いてしまったんです」


「ふぅん。ま、いいや。そんなお人好しの君は成仏するために、未練を解消しなくてはいけないんだ。未練の内容は覚えてるね?」


「未練…?」


「死ぬ間際に君が強く願った思いだよ」



たしか、車に弾き飛ばされ体に強烈な痛みが走り、もう自分は死んでしまう、直感的にそう感じた。


そしてその後に…。
< 124 / 129 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop