あの花が咲く頃、君に会いにいく。
突然の登場に驚く私とは反対に、冷静な楓が淡々と尋ねた。



「なにさーそんな怖い顔しなくてもいいじゃんー。私たちはただ、大事な友達だった紫音にお花を添えてあげてほしいだけだよ。はい」



ポニーテールの女の子が笑顔で持っていた黒い花を楓に手渡した。



…今、紫音って言った?


もしかして、私のこと…?



「…なんで俺?」


「あ、藤原にだけ頼んでるわけじゃないよ。登校してきてるクラスメイトみんなに頼んでるんだ」



ほら、と言って女の子が指差した先にある机の上には、すでにたくさんの花が添えられていた。


…もしかして、この三人が生前の私とよく一緒にいた友達、なのだろうか?



「いやーこいつら、優しいよなー」



センター分けの男の子が急に現れたかと思うと、馴れ馴れしく楓と肩を組んだ。


楓はあからさまに嫌そうに顔をしかめている。



「亡くなった早乙女のために、みんなで花を添えてあげようって言って持ってきてくれたんだぜ?俺たちよりも悲しいはずで、明るく振る舞うことだって楽じゃないのに本当えらいよな」


「あはは、やめてよもうー。私たちだってまだ受け入れられない現実だけど、いつまでも悲しんでたら紫音に怒られちゃうもん。ね?」


「そうそう。それなら紫音のためにも、明るく笑ってようって決めたんだよねー」


「せめてもの気持ちを込めて、クラスみんなでお花を添えてあげようってなったんだ」
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