あの花が咲く頃、君に会いにいく。
「ちょ、なにするの!せっかくくれた花を…!」



花屋で働いているくせに、死んだクラスメイト(私)に花を添えてくれるどころか捨てるなんて!


なんてひどいことをするんだ!



「ああ、花に罪はないもんな」


「は?いや、そういうことじゃなくて!」



楓は怒る私をちらりと一瞥してから今捨てたばかりの花を再び手に取り、私の前に突き出してきた。



「この花も、早乙女の机にクラスメイト達が置いたっていう大量の花も、亡くなった相手に贈るべき花じゃないんだ」


「…え?」


「一つだけならまだしも、全部そうだった。死者に贈ってはいけない花、とでもわざわざ調べたんだろうな。普通の人なら多分一目見ただけじゃ気づけないだろう。簡単に言えば、嫌がらせだな。あの花を用意したという相澤たち四人は早乙女のことを馬鹿にしている」


「え、ちょ、待ってよ。な、なんで四人がそんなこと…。だって、私たちは仲良いグループだったんでしょ?さっきだって、私のために明るく振る舞おうって言って…」


「表面上では、仲良いという可能性だってあるだろ。本当のことは俺にも、記憶のない早乙女にも今はわからない。だからそれを知る必要がある」



どう見てもさっきの会話からは私のことを考えて、悲しんでくれて、それでも私のために前を向こうという気持ちが感じられたのに。


それが、全部嘘だった…?



言葉が出てこなくて、その場に突っ立っているとタイミングよくチャイムが鳴り響き、楓と教室に戻る。


机の上に置いてあった花達はもうなく、その後クラスメイトの口から私の話題が出ることもなかった。
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