あの花が咲く頃、君に会いにいく。
「ここは生と死の狭間の空間。死んだ人間はみんなここに来て、担当である“天使様”に未練についてとかその他諸々の説明を受けて再び現世に戻される。今まで、自分が死んだことに気づかないままここに来る人はたくさんいたけど、未練の内容は覚えているはずなんだ。未練はその人が死ぬ前に強く願った叶えたい想い。だからそれは忘れることはないんだけど…記憶喪失だし未練も覚えていない子は僕も初めてだよ」


「そんな…じゃあ私はこれからどうすればいいの？」


「まあ、現世に戻ればなんらかしら記憶を取り戻すかも。とりあえず、49日間頑張って」


「はあ？そんな適当な…ってうわあああああ！？」



いきなり足場がなくなったかのように体が下に落ちていく。


咄嗟のことに何かを掴もうと手を伸ばすが、空を切るだけで何も意味がない。



私は下に下にと落とされていくうちに、いつの間にか気を失っていた…。


＊


目が覚めると、私は道路のど真ん中で寝ていた。



「え、どこここ…？」



辺りを見渡してみるが、ここがどこなのかわからないし、見覚えもない。


多分現世に戻されたんだろうけど…やっぱり何も思い出せない。



そのままその場に座り込んでいると、近くを自転車がものすごいスピードで走り抜けていき、思わずびくりとする。


危ない。もう少しずれた場所にいたら轢かれていた。…って、幽霊だから轢かれないのかな。



「…あの」



近くを通りすぎた両手にビニール袋を持っているおばさんに話しかけてみるが、もちろん反応はない。
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