あの花が咲く頃、君に会いにいく。
「あの、すみません!」



おばさんの腕を掴もうとするが、すいっとすり抜けてしまう。



「…やっぱり、死んでるんだ」



夢じゃ、なかったんだな…。


自分の手を見つめ、ぐっと拳を作り顔を上げる。



落ち込んでいたって仕方ない。


記憶がないからって頼れる人もいないんだから、自分でなんとかしないと。



「…って言っても、これからどうしよう…」



今わかる情報は名前のみ。こんなのでどうやって未練まで思い出せっていうのだ。



「…あ、制服」



ふと、自分の着ている制服に視線を落とす。


ここがどこかはわからないけど、この制服の学校がもしかしたら近くにあったりしないだろうか。



よし、と小さく気合いを入れ、立ち上がる。



とりあえず真っ直ぐ歩くこと三十分くらい。歩いても歩いても、制服が同じ学生は見つからない。



「…はあ、疲れた」
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