あの花が咲く頃、君に会いにいく。
「…見えてるのか？」


「あ、ううん違うの。この前藤原くんが霊感があるって言ってた時に、ここに紫音がいるって言ってたからもしかして今もいるんじゃないのかなって思って」



楓が私にチラリと視線を向けてきた。



「いるって言って！私はここにいるって！」



楓はなぜか黙ったままだ。


…もしかして、まだ怒ってるの？



「未練は思い出したのか？」


「え…？未練？まだ…だけど…」



…そうだ。茅乃との思い出はもう全て思い出したはずなのに、未練だけは思い出せない。


…もしかしたら、未練の内容は茅乃のことではないのかもしれない。



「中町のことはもう思い出したんじゃないのか？未練をよく思い出してみろ。…もしも、中町が未練に関わってるなら、早乙女の姿は中町に見えるようになるんだ」


「え…」



どうして、と疑問が先に出てきたが、そんなことよりも過去の記憶を必死に思い出すことに専念する。



あの日。茅乃に明日凛達と話すよと言ったあの日。


茅乃とわかれてから…家に帰って…それで…。


家にいた記憶から場面が切り替わり、頭に流れてきたのは、猛スピードで私めがけて突っ込んできたトラック。そして…。
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