あの花が咲く頃、君に会いにいく。
「いらっしゃい。あらまあ、可愛い兄妹ね。もしかして、カーネーション買いに来てくれたの?」


「はい」



奥からお母さんと同い年くらいの女の人が出てきて、ニコニコと話しかけてきた。


人見知りだった私はお兄ちゃんの後ろに隠れる。



「お兄ちゃん、カーネーションどれー?」


「えっと…」


「カーネーションはね、はい、これよ」



女の人が持ってきてくれた赤い花に「わあ…」と思わず歓声を上げる。



「可愛いお花…」


「ふふっ、そうね。カーネーションはね、大好きなお母さんの幸せを祈って母の日に贈るお花なのよ。花言葉は感謝」


「花言葉?」


「お花についている意味みたいなものよ。言葉じゃなくて思いをお花に込めて贈るのよ」


「お母さんにカーネーションあげる!それで、いつもありがとうって伝える!」



女の人は私の選んだ一本のカーネーションを可愛い柄のついた紙で包んで、渡してくれた。


家に帰ると、手も洗わずにリビングに走る。



「あら、紫音おかえり」


「お母さん!これ!お兄ちゃんと買ったの!」
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