あの花が咲く頃、君に会いにいく。
「…霊感があるから、幽霊が見えんだよ。…自分の名前、覚えてないのか?」


「あーなんか記憶喪失?というか、何も覚えてなくて…。あなたは私のこと知ってるの?」


「知ってるっていうか…」


(かえで)くーん!その鉢植え置き終わったら、次はこっちを手伝ってー!」



奥から女の人の声が聞こえてきて、男の子は私をちらりと見てから奥に行ってしまった。


それからしばらくして男の子が再び表に現れた。



「あなたは誰なの?ここで働いてるの?さっき何を言いかけたの?」


「…まだいたのかよ」


「私、記憶喪失だから未練とかも何もわからないの。私のこと何か知ってるなら、教えて!」


「別に特に知ってることなんてねぇよ。ただ同じクラスってだけ」


「同じクラス…。ねえ、私のことが見えるならさ、未練解消てつだ…」


「無理。霊は嫌いなんだよ。仕事の邪魔だから早くどっか行け」



私の言葉を遮るように冷たく突き放した男の子は、それ以上何も喋ってくれなかった。


でもここで引いてしまったらダメな気がした。


私のことが見えて、少しでも知っている人がいるのに、逃すなんてもったいない。



男の子の仕事が終わるまで道の隅っこで待ちながら、うつらうつらとして来た頃に男の子はお店から出てきた。


男の子は駆け寄ってきた私にあからさまに嫌な顔をしながら、それでも歩き出した。



私も人の目があるから男の子にはあえて何も話しかけず、黙々と歩き続ける男の子の半歩後ろを歩く。
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