あの花が咲く頃、君に会いにいく。
近くのベンチに楓、桜さん、大翔くんの順で座り、先に沈黙を破ったのは楓だった。



「今日は、思い出の場所だから大翔くんと一緒にここへ…?」


「あら、あの人そんなことまで話していたのね。…ええ、今日は瑛一さんが亡くなって四十九日なの。だから、大翔とここに来た。なんとなくだけど、瑛一さんもここに来てくれる気がしてね。楓くん?って言ったかしら?瑛一さんにお世話になっていたって言っていたけど…」


「あ、はい。俺、こう見えて結構問題起こしてて。よく警察沙汰にもなったりして、その時に柴崎さんと出会ったんです。柴崎さんは俺なんかみたいな奴にも優しく接してくれて、よく桜さんたちのことも聞いてました」



少し離れたところから柴崎さんと楓たちの会話を聞きながら、パッと思いついた嘘にしてはすごいなと感心する。



「お兄ちゃん、お父さんの友達なの?」



じっと黙って話を聞いていた大翔くんが、桜さんの後ろからひょこっと身を乗り出した。



「…ああ。二人のこと、大好きだって言ってたよ」


「そうなんだ。僕もね、お父さんがだーいすき!お父さんね、警察官なんだよ!悪者をたくさんやっつけるかっこいい警察官!僕も大人になったらお父さんみたいな警察官になるの!お父さんに話したいことたくさんあるのになあ。早く帰ってこないかなあ」


「…この子ね、本当に瑛一さんが大好きなのよ。だからかな。瑛一さんが死んじゃったってわかってはいるんだろうけど、認めたくないみたいでね…」


「お父さんは死んでなんかいない!いつもみたいにいってくるねって僕の頭撫でてくれて、帰ってきたらアイス買いに行く約束だってしてたんだ!お父さんは約束を守る人だもん。きっと悪者を倒すのに時間がかかっちゃってるだけなんだよ」



桜さんがぐっと唇を噛んで必死に何かに耐えていた。


大翔くんくらいの歳でいきなりお父さんが死んじゃったなんて聞かされても、信じられないのも無理はない。



「大翔…」
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