あの花が咲く頃、君に会いにいく。

柴崎さんがぐっと拳を握りしめて、苦しそうに顔を歪めていた。



「柴崎さん…お父さんは、強い人だよね。だから、ちゃんと大翔くんのところに帰ってくるよ。あんなに強くて優しい人が、何も言わずにいなくなったりなんてしない」


「うん！お父さんに会いたいなあ」



柴崎さんは大翔くんの言葉に、何かを決めたように顔を上げた。



「すみません、引き止めて。だけど、もう少しだけここで待っててもらえませんか？」


「え？ええ、わかったわ」



楓は桜さんたちをベンチに置いてきたまま、こちらに来ると、柴崎さんを真っ直ぐ見た。



「ありがとう、楓くん。紫音ちゃんもここまでついて来てくれてありがとう。怖いなんて、本当情けないなあ。君たち二人に出会えなかったら、桜と大翔に何も言わずにこのまま今日を終えるところだった。家族に会うことをなんで躊躇っていたんだろうね。僕はもう、怖いなんて言わないよ」



柴崎さんは桜さんと大翔くんに視線を移すと、真っ直ぐ前を向いて歩いていった。



「…え？」


「お父さん！」



大翔くんが柴崎さんに勢いよく抱きついた。



「どうして…瑛一さん…？」


「やあ、ただいま」


「お父さん！やっぱり死んでなんかいなかったんだね！」