あの花が咲く頃、君に会いにいく。
柴崎さんは大翔くんの頭を愛おしそうに撫で、優しく微笑んだ。



「ごめんな、大翔。お父さんは、この光が消えたらもう消えてしまうんだ」


「光…?なんで?いなくならないでよ、お父さん」


「大翔。今度はお父さんの代わりに、お母さんを守るんだよ。国民を守る警察官になるためには、身近な人から幸せにしてやるんだ。急にいなくなってごめんな。だけど、大翔のことはいつでも見てるから。だから…っ」



柴崎さんが我慢できなくなったように口元をおさえてズルズルとしゃがみ込んでしまった。



「ごめんなあ…っ、ごめん…」


「瑛一さん…」



桜さんが同じようにしゃがみ込んで、柴崎さんの背中にそっと手を添えた。



「瑛一さんと過ごせた時間はとても幸せだったよ。だからもう、謝らないで」



大翔くんが泣いている二人をぎゅーと抱きしめた。



「お父さん、泣かないで。僕、ちゃんとお母さんのこと守るよ。それでお父さんみたいな警察官になる!」


「…そうか。次に会った時、たくさん話聞かせてな。桜…ありがとう。僕と結婚してくれて。二人と過ごせて、幸せだった」



三人は、柴崎さんの光が消えるまでずっと抱きしめ合っていた。





「本当に桜さんたちに何も言わないで帰っちゃっていいの?」



駅に向かう楓の隣を飛びながら尋ねる。
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