あの花が咲く頃、君に会いにいく。
楓の優しさも、今は棘みたいに私の心を痛くする。


早く思い出さないと。これ以上楓に迷惑をかけられない。


お母さんだってあのままにしておけない。きっと私の未練にはお母さんが関わっているから。





気持ちとは裏腹に、記憶を思い出せることはなく、また三日が経ってしまった。


家にいても何も思い出せることはなく、気分を変えるために学校に行く。



ちょうど昼休みの学校は、お昼を楽しそうに過ごす生徒で溢れていた。


楓は相変わらず一人だったけど。



中庭で茅乃たちの姿を見つける。茅乃たちは楽しそうに笑いながら凛のスマホを見ていた。


私も後ろから見てみると、四人で変顔をして撮ったプリクラの画像を見ていたようで、凛がこれまた面白くて思わず私も吹き出してしまう。



「凛ってば面白すぎる…!変顔のプロだね」


「やめてくれる!?そんなの全然嬉しくないんだけど!茅乃だってひどいからね!」


「いや、凛には私たち勝てないよ」


「うんうん、この凛の方が好きだなー」



あははと大声で楽しそうに笑っている四人に私の姿は見えない。もう、私はみんなと笑えない。


くるりと踵を返して、なるべく人通りの少ない場所まで移動する。



みんなは前に進んでいるのに、私は何をしているんだろう。
< 79 / 129 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop