あの花が咲く頃、君に会いにいく。
お父さんが手にしているカメラを覗き込むと、私たち三人は笑ってピースをしているのにお父さんだけがいびつなピースで横を向いて半目だった。



「あはは!お父さん変なのー」


「もう一回!もう一回撮ろ!」


「もういいわよ、そもそもなんで急に家で家族写真なんて撮りたがるのよ」


「だってこれからおまえたちをたくさん撮っていく新しいカメラを買ったんだぞ!一番最初はやっぱ家族全員で撮りたいじゃないか!」



子どものようにいじけるお父さんに、私たちは一斉に吹き出す。


ああ、楽しいな。幸せだな。この時間がずっと続けばいいのに。



そう思っていたのに、急に場面は切り替わった。



「仕事仕事って、もう少しこの子達のことも考えてあげたらどうなの!?この前の運動会だってドタキャンして、次は旅行までドタキャン?そんなに仕事が大事なら帰ってこないでよ!」


「なんだよ仕方ないだろ!おまえたちが生活できるために俺だって必死に働いてるんだ!それなのにおまえは…毎日毎日ぎゃあぎゃあ喚くなよ」


「何よその言い方…!」



お兄ちゃんの部屋で毛布にくるまりながら、それでも聞こえてくる二人の言い争いに耳を塞ぐ。


お兄ちゃんが「大丈夫だよ」と言って頭を撫でてくれて、安心や恐怖、混乱などたくさんの気持ちから涙をポロポロとこぼす。



お母さんとお父さんは、私が小三に上がった頃からよく喧嘩をするようになった。


前まであんなに仲がよかったのに、何かとお互いの不満をぶつけ合うようになり二人が笑っているところなんてもうずっと見ていない。


いつかまたみんなで仲良く笑えたらいい。そう思っていたのに、そんな日常はもう戻ってこなかった。
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