あの花が咲く頃、君に会いにいく。
「…え、あれ、楓?」



中に入ってきたお父さんの後ろには楓の姿もあって、驚いて目を丸くする。


楓は私を見ると首をくいっとリビングの方に向けた。


ついてこい、と言うことだろうか…?



二人の後をわけがわからないままついていく。



「あなた…なんで勝手に入ってきてるの…」


「この家の鍵、まだ捨ててなかったんだ。…いつか戻ってきたいと思ってたから」


「何…言ってんの…。出てってよ!出て…」



立ち上がったお母さんが、やっと後ろにいた楓の存在に気づいた。



「えっと、紫音さんのクラスメイトの藤原楓です。紫音さんに…お線香を上げさせてください」


「家の前にいた楓くんと偶然会ったんだ。…俺もこれで小枝に会いにくるのは最後にするから、せめて二人にお線香を上げさせてほしい」



お母さんは少し迷う素振りをしてから、観念したのか奥の襖を開けて中に入っていった。


ついていくと、三畳くらいの小さな部屋の真ん中の机に遺影が二つ置かれていた。


中学生らしき私と、学ランを着た男の子。なぜかお兄ちゃんの顔だけが靄がかかっているかのように見えなかった。



目を細めたりと色々試していると、すっとお父さんが目の前に立ちお線香に火をつけてから手を合わせた。



「梨央は…道路に飛び出した小さな男の子を庇って死んだ。紫音が死んだのも、車の事故だった…」
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