あの花が咲く頃、君に会いにいく。
お母さんの手を取って、泣きそうになるのを堪えながらにこっと笑う。



「お母さんのこと、一人にしちゃってごめんね。こんな親不孝者の娘で、ごめんね…」



首を横に振りながら顔を覆って崩れたお母さんを支えるお父さんに、視線を移す。



「お父さん…。お父さんがいなくなってから私はずっと寂しかった。お兄ちゃんのお葬式にも来なかったのは…お母さんが来ないでって言ったからなんだよね…?それでも、来てほしかった。もっと会いに来てほしかった。私にとってのお父さんはこの世界でたった一人だけなんだから」



お父さんは泣きながら私の頭を昔のように撫でて「ごめん、ごめんな…」と何度も謝った。



光はだんだんと薄まってきている。


二人と話せる時間も、あと少しだ。



「もうお母さんを支えてあげられるのは、お父さんしかいない。少しでも私たちを大事だと思ってくれているなら、お母さんを支えてあげて。そばにいてあげて」


「…ああ、約束する。ごめん、ごめん紫音…梨央…」



泣き続けているお母さんとお父さんの顔をぐいっと上にあげる。



「もうごめんって言うのも、メソメソするのも禁止!今日で終わりにしてよね!いつまでもそんな姿見せられてたら、安心してあの世にも逝けないんだから!私がいなくなっても、笑って!大好きな二人にはずっと笑っててほしいから」



ハッとお母さんが私に向かって手を伸ばしてきたけど、すかっとすり抜けて金色に包まれていた光はもうとっくに消えていた。


もう二人に私の姿は見えないんだ。



「小枝…」
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