あの花が咲く頃、君に会いにいく。
「あ…。…っ」



いたたまれなくなり、男の子に背を向けて飛び去る。


飛べたというのに、感動よりも先に涙が出てきた。



どうして、記憶を失っちゃったんだろう…。


記憶さえあれば、未練もわかって、今頃もう解消できていたのかな…。





飛び疲れ、たまたま目についた誰も住んでいなさそうな廃墟に転がり込む。


ぼろぼろの今にも壊れそうな階段で二階に上がると、これまたぼろぼろなベッドと机が一つずつぽつんと取り残されたように置いてあった。


そのベッドに思いっきりダイブする。…と言っても、気を抜くとすり抜けてしまうのだけれど。



「はあ…これから、どうしよう…」



あの男の子は…もう頼れない。


せめて、どこの学校なのか聞いておけばよかったな…。





気がついたら、眠っていた。


ハッと起き上がると、窓の外はすっかりと夜になっていた。



「どのくらい寝てたんだろ…」



ベッドに腰掛けながら、窓からぼんやりと見える月を眺める。
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