あの花が咲く頃、君に会いにいく。
その時だった。


聞き覚えのある不気味な濡れた足音が聞こえて来たのは。



「…冗談じゃない!」



慌てて空き教室の外に出ようとする。



「…いったあ!?」



勢いよくすり抜けようとした体は、ごんっという鈍い音を立ててドアにおでこをぶつけた。



「どうなってんの!?」



いつもだったら触れないはずの扉に、まるで生きていた頃のように触れた。



「く…っ、開かない…っ!」



そのせいで閉じ込められてしまった。


前に楓は悪霊は未練解消中の霊にも手を出してくると言っていたのに。油断していた。



足音は扉の前でぴたりと止まった。


じっと息を潜めて後ずさる。


…だが、扉は開かなかった。



だから不思議に思って近づいた瞬間に、ばんっ!と勢いよく扉は勝手に開いて、あの日の黒髪の女の子が髪の毛を蛇のように空中で踊らせて立っていた。
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