あの花が咲く頃、君に会いにいく。
考えるフリをしながら、至近距離で見つめられてドキドキしていることを悟られないように少し楓と距離を取る。



「あ、あの悪霊、なんとかしないとやばいんじゃない?楓も力増してたって言ってたよね」


「ああ、あれは俺も考えてた。ただ俺みたいな力のない除霊師よりもちゃんとした人を呼ぶべきだと思うが…。まあ一応なんとかしてみて、無理だったら本場の人を呼ぶしかない」


「私もそれ手伝う!悪霊になっちゃったってことは、元は霊だったんでしょ?なんであんな感じになっちゃったのか少し気になるし」



楓がじっと私の顔を見つめていることに気づき、「な、なに?」と戸惑いながら聞く。



「…もしまた何か不安になることがあったら、俺に言え。迷惑とかそんなの全く思わないから。…もっと、俺を頼ってくれていい」



楓は耐えられなくなったのか、視線を逸らすと再び背を向けてしまった。


暗くてよく見えないけど、きっと耳を赤くしているだろう。



嬉しくて、面白くて、ふふっと笑いがこぼれる。



「うん、ありがとう」



広くて大きい楓の背中に手を当ててみるけど、やっぱり触れない。


それでも一度だけ触れた温もりを思い出して、そっと目を閉じた。





次の日の放課後、私は楓と近くの図書館に来ていた。


あの女の子の悪霊は何者なのか調べるために、昔の新聞を調べることになったからだ。


私が右側、楓が左側の記事を調べることにして、二十年前の記事から遡っていく。
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