if…運命の恋 番外編Ⅰ「美しい女性」
勇がそう独り言のように美子に話すと、美子は黙ったまま勇の顔を見てから、少しバツが悪そうに微笑んだ。
「ごめんなさい。助けていただいたのに、、」
勇はそういう美子の顔から目を背けて、後ろを見ると言った。
『酷いよな。あんな音量でここへ来られたら、たまったもんじゃないッ!大事にならなくて良かったけど、気をつけたほうがイイよ。まだ、あそこにアイツらいるみたいだから』
そう言ってから、勇は立ち上がると服についた芝を振り払った。
美子はそんな勇を見上げた。
かなりの長身、細身で、、いいえ、さっきアクシデントとはいえ初めて父親以外の男性に抱き寄せられてしまった。その時に感じた逞しくて大きな胸板を思い出す。
美子は顔が真っ赤になってしまい、俯いた。
『それじゃ、僕はこれで』
”えッ? まさか、私をひとりにする気? 置いて行く気なの?”
爽やかな微笑みを残して、美子の元から去ろうとする勇に美子は声をかけた。
「あの、、ひとりにしないで下さる?」
『えッ?』
美子の声にその場から去ろうとした勇が振り返った。
「あの、、ハンカチもお借りしたままだし、、それに私、動けないみたいなんです」
美子は恥ずかしそうに小さな声で勇に言うと再び顔を俯かせる。勇は馬に触れながら『ふぅ~~』と大きく息を吐いて、再び美子の傍に近づいた。