if…運命の恋 番外編Ⅰ「美しい女性」
クラブハウス近くに来ると、男性に抱かれて運ばれる美子を見て、周りの声が聞こえてくる。そりゃ、目立つでしょ!
勇はクラブハウスのエントランスのソファに美子をそっと降ろしてから美子にだけ聞こえる声で囁いた。
『これじゃあ、尚更大変な騒ぎになってしまったね。まぁ、時が過ぎればすぐに落ち着きますよ。ここなら安全ですよね?もう怖くない?大丈夫?』
勇は美子にそう話すと真っ赤になりながら俯く彼女に、フッと微笑んでからクラブハウスの外へ行ってしまう。
”あっ、そうだわ、、お名前を聞くのを忘れてた” そう思ってはみたものの、すでにその頃は彼の姿はなかった。
美子の周りには、野次馬的な女子が集まって、事の成り行きを詳しく聞きたがった。
他の子の話では、美子を助けてくれお姫様抱っこしてくれた彼が、とっても女性から人気がある男性だっていう事はわかった。
彼の名前を他の子から聞いた。最近、この乗馬クラブに顔を見せるようになって、話題の男性だったのだ。
美子はそれからというもの、乗馬クラブに行く日が待ち遠しいモノになった。
”もしかしたら、また彼に逢えるかもしれない”
”もし逢ったら、この間のお礼をちゃんと伝えて、そして・・・そして、どうしよう?”
”だけど、、今日も来ていない。もう逢えないのかもしれない”
そんな考え事をしながら馬の鞍を着け始めた。完全にボ~~ッとしながら、心ここにあらずの状態だった。
美子の後から声が聞こえた
『こんにちわ』
ボ~ッとしている美子にはその声が届いていない。
もう頭の中は彼の事でいっぱいになっていたから、なのだが。