if…運命の恋 番外編Ⅰ「美しい女性」
彼女とは将来に何の約束だってしていない。勿論、”愛を告げる事”だってまだだった。今日は昼から暖かい時間を選んで公園にいた。2月の国家試験も終わり、来週はポロの競技会の予定だった。そんな話をしていると、
「片瀬さん、私も応援に行って良いですか?」
『勿論良いけど、、家は大丈夫?』
家の事を持ち出すと、美子は憂鬱そうな顔をした。
「はぁ~~なんとかします。父はきっと無理ですけど、母なら協力してくれると思います」
『無理はダメだよ。この間みたいに帰ってから具合を悪くしたら大変だし、、』
そうなのだ、美子は箱入りな上、身体のつくりも華奢で良く熱を出してしまう。この間のデートの後も、自宅に帰ってから倒れたのだと聞いた。僕たちは連絡手段が”会うこと”しかないから、彼女がもしも病気になったりしたら大変だ。
「うふふ、、充分に休養したからもう大丈夫よ」そう言って彼女は俺に笑顔をむける。
3月に入り今日はポロ競技会の日だ。広大な芝の上で馬上でマレットを持ち、ゴールに向けて球を運び打つ7分間のチャッカーの区切りで1試合6回のチェッカーをする1チーム4人の競技だ。馬も1試合4頭まで交換できるため、馬との相性も大切だ。
今日乗るであろう馬に挨拶をして互いに怪我のないように祈る。
俺の友人は父親が有名な馬主で、かなりのお金持ちだ。それが理由で仲良くなったわけではないが、大学に入った頃から何かと俺に頼る友人の相談役をしてきた。卒業前にこの競技をする話を出されメンバーに無理にされたと言っても過言ではない。だが、こんな経験をさせてくれた友人にも感謝だ。
それに、乗馬クラブに行かなけりゃ、美子にも知り合う事さえなかったのだから。
そんな友人がニヤニヤしながら話しかけてくる。
「か~たせ! どうよ調子?」
『まあまあだな』
口に手を当てククッと笑う友人に、俺は怪訝な顔をする。
「あっ、、彼女だ!!」
『えッ?』