if…運命の恋 番外編Ⅰ「美しい女性」
ポロの試合が始まり、背の高い馬に乗って激しく球を打ち合うのだから、目の前で見ればそりゃ迫力あるし、声もでるだろう。広大なフィールドだから、遠くに行けば走り動く馬の足音と、自分の呼吸音しかなくて48分間のゲームは結構ハードだった。
結果はもちろん勝ちだ。だけど、相手チームの一人と接触してちょっとばかり腕にかすり傷を作ってしまった。
『ちゃんと見れた?』
「はい、、おめでとうございます。勝ちましたね、、だけど、、手は大丈夫ですか?」
『ありがとう、、ああ、、見てたの?』
「はい、、あの、、すぐに病院に行った方が」
そう美子は焦りながら言うのだけれど、俺は首を横に振って笑った。
『これは、すこしだけ安静にしてれば大丈夫、、、それより今日、この後だけど』
そう言いかけた時、数人の男性が彼女のところに来た。そして彼女の腕を取ると「お嬢様、御父上から至急戻る様にとの命です」と言ってきた。
「ちょ、、ちょっと待って!あなた達はお父様に言われて?」
「そうです。御父上は今日の事、随分お怒りのご様子です。さぁ、帰りましょう」
俺は目の前で彼女が連れて行かれるのを黙ってみるしかできないのか?!
「ちょっと待ってください!」
『美子さん、待ってくれ!』
同時に互いの声が響いた。彼女を迎えに来た男たちは一瞬怯み、俺と彼女を交互に見ると一番偉そうな奴が、ため息を吐きながら言った。
「10分、、いや5分だけですよ」
美子はその言葉を聞いて、その男に「ありがとう」と伝えると俺の傍に近寄った。
「片瀬さん、私、あなたに伝えたい事があるんです。どうしても、、」
彼女の真剣な眼差しを感じながら、俺は頷く。
『俺も、、そうだ、言いたい事がある』
「今度の日曜日に最初に会ったあの下で、同じ時間で」小さな声で彼女はそう俺に言うと、ずっと先にある東京タワーを見た。
『わかった、、必ず待ってる。あの下で』