if…運命の恋 番外編Ⅰ「美しい女性」
優人にリンゴジュースのパックを戴いて、ストローで飲ませている最中に俊がシートに戻ってくる。
座ってから私の顔を覗き込むと、優しいまなざしを向けてくれた。
「ん? なに?」
『薫、、』名前を呼ぶと、優人の頭を通り越して私の唇に ”チュ”と俊の唇が重なったのだ。
「えッ!!」
ほんの一瞬の出来事に驚くのは私だけ、彼は何食わぬ顔して優人の頭をポンポンしていた。
優人の頭上で起こる事態に、優人自身はすでに慣れっこになっているようだから気にもしていない。これは、ある意味末恐ろしいかもしれない。
福岡空港に着くと、俊のお義母さまがお迎えにきてくれていた。
片瀬春子さん、65歳にしては、肌つやも良く”健康です”という感じの女性だ。彼女、隠れ韓流ファンで以前は良く韓流スターを追っかけて上京していたが、最近では違うらしい。
『あっほらッ、婆ばだぞ』俊の言葉に抱かれた優人が、迎えのお義母さまに気づいた。とってもニコニコ笑顔で手を振って立っていたお母様、すでに視線が優人に向いていて、息子など目にも留めていないのだ。
『母さん!ただいま』
「きゃあ~~!優人~~!バアバよ~~!おかえり~~」
「婆ば~~!」
目に入れても痛くない程の可愛い孫に一直線で、優人を抱き寄せて思いっきり嬉しさを表現する。そんな姿に俊と薫は微笑んでしまうのだった。孫は息子を超えるのだ。