幼なじみの外科医と密なる関係~甘やかな結婚生活~
「キャー! 大丈夫ですか?」
「誰か居ない? 医者か救急車!」

知らない誰かが叫んでいるのが聞こえる。私は思わず、瑛ちゃんの顔を見た。瑛ちゃんは何か言いたそうに声の聞こえる方向を気にしている。

「……直ぐに行ってあげて。私は大丈夫だよ」

私は咄嗟に満面の笑みを浮かべた。作り笑顔かもしれないけれど、泣き出さないように笑うしか無かった。

「……ごめん、陽菜乃……!」

瑛ちゃんは私の事を置いて、この場から居なくなった。

「え? どうしましたか? 一体、どちらに……?」

突然の出来事に介添え人の女性が慌てふためいている。新郎が式の途中で居なくなるなんて、ドラマじゃあるまいし、予測出来ないだろう。

「彼は医者なので人助けです。皆さん、待ってますから私は一人でも大丈夫です。一人でも事情、説明出来ます」

泣きそうになるのを我慢していた為、声に震えが出る。

「待っていましょうか?」

「多分、病院まで付き添うのだと思うので大丈夫です。私が一人で出て行って事情を説明します……」

入場曲が流れ出したら扉を開けるはずが、いつになっても開かずに居るので不審に思っている人達は沢山居ただろう。スタッフも混乱していると思う。……なので、私は一人でも歩いて行く。
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