幼なじみの外科医と密なる関係~甘やかな結婚生活~
長めの深呼吸をしてから、扉を開けてもらい、深々とお辞儀をする。状況を把握して私の我儘を通してくれた介添え人の方も深々とお辞儀をした。

異例の事態に披露宴会場はざわついている。

「も、申し訳……ご、」

私の頭の中ではスラスラと難無く伝えられているのに、いざ言葉にしようとすると上手く出て来なかった。伝えたいのに伝えられないもどかしさ。

「申し訳御座いません……! 新郎はたった今、式場内で体調を崩された方の元へと行きました。新郎は病院へと付き添い、戻らないかもしれませんが、時間の許す限り、御歓談下さりますよう申し上げます」

緊張して言葉が出せなかった私の代わりに介添え人さんが代弁してくれた。不測の事態を補うように司会者もフォローして下さり、一時を忍んだ。

私は誘導され、高砂のテーブルに着席した。

司会者は余興などを予定通りにこなし、事なきを得た。お色直しでは、キャンドルサービスを行わずに高砂のテーブルに介添え人さんと向かうだけとなった。

瑛ちゃんは、最後のゲストのお見送りまでに戻って来なかった。

私は理解のある振りをして、作り笑顔を振りまきながら乗り越えた。ホテル内に二次会場を用意していたが、二次会は一人の重さに耐えられずに中止する運びとなった。
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