幼なじみの外科医と密なる関係~甘やかな結婚生活~
初音さんはじゃがいもと玉ねぎを真っ黒に焦がしてしまった。原因は多分、最初から強火全開でバターを溶かしてしまい、鍋自体が焦げ付いてしまったのだ。辺りには焦げ付いた匂いが充満する。

初音さんは半泣きになりながら、もう一度やり直す。

料理が完成し、試食の時間になったが初音さんはまだ頑張っていた。先生も付きっきりで指導をして、仕上がる頃には、他の生徒さんは片付けをして帰り始める。試食を待とうとしていた時、先生に「せっかく目の前に暖かく仕上げたお料理があるのに、冷めてしまったらお料理が可哀想ですよ」と言われて先に食べ始めた。

「有難う御座いました。とても美味しく仕上がりました」

初音さんは感動しながら食べていた。

「小花衣さんも慌てずに手順通りにこなせば出来ないはずはないですから、次回も頑張りましょうね」

先生は優しく微笑みかけて、自分の調理台の片付けに入った。その後は初音さんが片付けまで済んだので、先生にお礼を言って料理教室を後にした。

「……私ね、料理が出来ないのよ。包丁も怖くて使えなくて。

普段はね、朝早くから遅くまで仕事をしてるからと言ってお義母様が食事を用意してくれてるの。お義母様と高雅さんはその事を承知で受け入れてくれたけど、お義父様は知らないから、この機会に私も頑張るって決めたのに……こんなにも料理が出来ないなんてね」

今思い返せば、まだ実家に住んでいた時に私と初音さんが店を閉めて、兄よりも先に帰宅した時には食事が出来ていた。それは前々からの延長で、閉店間際まで働いている私達への気遣いで、母が用意していてくれたとしか思ってなかった。
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