幼なじみの外科医と密なる関係~甘やかな結婚生活~
「瑛ちゃん、お疲れ様でした」

「陽菜乃も色々と支えてくれて有難う」

飲み物が届くとカチンとグラスを合わせて、乾杯をする。瑛ちゃんがオーダーしたお任せのワインは、口に含んだ瞬間は苦味さ果実味あふれる濃厚な味わいのフルボディの赤ワインだと言っていた。

「うふふ、カウンターの目の前で焼いてくれるステーキって言えば、某ドラマを思い出すなぁ」

「ははっ、俺、横領とかしてないし、権力もいらないタイプなんだけど……!」

食事を楽しみつつ、瑛ちゃんとの会話も大切にする。

「そうそう、食事とワインの相性を結婚に例えて"マリアージュ"って言うんでしょ?」

私は思い出したようにテレビで得た知識を瑛ちゃんに話す。

「そうみたいだね。このワインとステーキの相性はどう?」

「ちゃんとマリアージュしてるよ。やっぱりお肉にはガツンとフルボディの赤ワインが良いんだね」

柔らかなA5ランクの美味しいお肉には脂が多いが、フルボディの苦味のある赤ワインが上手く調和してくれているらしい。

「俺達もワインとステーキの様にお互いにバランスを取りながら、結婚生活を楽しもうね」

瑛ちゃんは私に優しく微笑みかけてくれる。目の前の綺麗な夜景など霞んでしまう程に瑛ちゃんが格好良過ぎて、私はドキドキしてしまう。

こんなに大切にしてくれて、こんなに甘い言葉をかけてくれる男性は一生で瑛ちゃん、ただ一人だ。瑛ちゃんが他の誰かでは無く、私を選んでくれた事を誇りに思う。

「私、忙しい瑛ちゃんを支えて行けるように出来る妻になるね。だから、私の事を忘れないでね。愛人作っちゃ嫌だよ」

「だから、テレビの見過ぎだって!」

瑛ちゃんと大人らしい楽しい時間をまだまだ沢山過ごしたい。

コース料理も終盤に差し掛かり、デザートのソルベを食べている時に急に眠気に襲われた。目を閉じたいけれど、閉じてしまったら最後だと思う。だけれども、気を抜くと目を閉じてしまいそうだった──
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