幼なじみの外科医と密なる関係~甘やかな結婚生活~
陣痛室では母が付きっきりで居てくれて、汗を拭いたり、強い陣痛がくる度に骨盤辺りをテニスボールでグッと押してくれていた。擦るよりも押された方が痛みが和らぐ。二人を産んだ母は冷静に私の痛みを対処していく。

瑛ちゃんは仕事の合間に様子を見に来ては、水のペットボトルを差し入れしたり、簡単に食べられるバウムクーヘンなどを売店で購入してきてくれた。体力の為に食べなさい、と母に促されたが、痛みで二口位しか食べる事は出来ない。

「赤ちゃんだって出てくるのが大変なんだよ。早くママに会いたくて頑張ってるんだから、陽菜乃も頑張ろうね。これだけ痛みが強くなって、汗も出てきたのだから、きっともうすぐだよ」

痛くて痛くて、母が握ってくれている手を強い力で握り返す。看護士さんと母いわく、今は二分間隔位の陣痛で、汗が沢山出てきたので、間もなくラストスパートだと言われる。

繰り返し訪れる痛みの狭間で眠気もやってきて、一瞬、気を失うのだが、寝ている暇などなく、痛みで無理矢理に起こされる。お産は半日や一日、下手したら日を跨ぐ事もあるらしいが、世の中のママ達も困難を乗り越えてきたのだから私も頑張らなくては。可愛い赤ちゃんに会う為に。

次第に子宮口も全開に近くなってきたので分娩室へと移動する。こんなに痛いのに歩いて行かなければいけないなんて酷過ぎる。お腹を抑えつつ、足を引きずるように歩いて行く。

そういえば、瑛ちゃんが出産に立ち会いたいと言っていたのだが来る気配がない。陣痛が起きて付き添いをしてくれていた瑛ちゃんだったが、急患が運ばれて来て心臓病の発作だったらしく、駆けつけて行った。

瑛ちゃんがその場から急に姿を消す事には慣れているから、大丈夫。私は母と周りの皆に支えられて立派に役目を果たしてくるから、瑛ちゃんも自分の役目を全うして欲しい。
< 95 / 112 >

この作品をシェア

pagetop