幼なじみの外科医と密なる関係~甘やかな結婚生活~
「子宮口も最大に近いし、分娩室に移動しましょうね。ゆっくりベッドから降りて下さい!」

看護士さんと助産師さんに連れて行かれ、私は分娩室へと移動し台に上がる。もうどこが痛いのかも分からないほどに、腰の辺りが痛い。台に上がるのもやっと。

「陣痛に合わせてイキミますからね。一緒にタイミング合わせましょうね。今、先生来るからちょっと待ってね」

待ってって何? 痛いよ、痛いのですけれど。待てないです、待ちたくないです。他人事みたいに言わないでよ、というのが今の正直な感想。

「あ、赤ちゃん、出てきてるね。二宮先生、間に合わないかも? 鷹司さん、大丈夫?」

「だ、だいじょ、ぶじゃ、……ないで、す」

間隔の短い陣痛が何度も襲ってきて、言葉もしどろもどろになる。何だか分からないけれど、異物が股の間に挟まってるみたいな感覚がする。こひなの頭かな?

「陽菜乃ちゃん、お待たせ! よく頑張ったね。次の陣痛からイキんで良いからね!」

「あ、ぁー!」

二宮先生が到着後、直ぐに陣痛の波がきてイキむ。何度かイキんだ後に挟まっている違和感がなくなり、ズルりと異物が抜けたような妙な感覚に陥る。

産まれたんだ、やっと。

「あれ? 臍帯絡まってる! 泣かないな? おーい、こひな、泣いて!」

産まれてきたのに、こひなが元気良く泣かない。何故? 私は分娩台から起き上がれず、泣かないこひなをただ眺める事しか出来なかった。

「チアノーゼ出てる! チアノーゼ! 至急、小児科に連絡!」
「はい!」

二宮先生達がバタバタしている。こひなの状態が思わしくないらしい。
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