幼なじみの外科医と密なる関係~甘やかな結婚生活~
母が売店で購入してきてくれたココアを飲み、出産直後の興奮状態が落ち着いてきて眠気が襲ってきた。母は起きるまで側に居るから安心して寝るようにと私に言う。私は母も仕事で疲れているのに申し訳ないと思いつつも、今日だけはお言葉に甘えて側に居てもらうことにした。

出産からの疲労と寝不足もあり、目を閉じたら直ぐにでも眠りにつけそうだ。心の中でおやすみなさいと唱え、目を閉じる。

目を閉じた時、こひなの顔が浮かぶ。そうだ、目が覚めたら、こひなに会いに行ける。その為には早く体力を回復させなければと思いながら、いつの間にか、記憶が飛んでいた──

「……瑛ちゃん?」

目が覚めた時、椅子に座った私服姿の瑛ちゃんが私の右手を握りしめたまま、ベッドに突っ伏して一緒に寝ている。母の姿はなく、瑛ちゃんが私に付き添ってくれていたみたいだった。ゆっくりと起き上がろうとしたが、やはり、骨盤付近が痛くて力が入らなかった。

どうしちゃったのかな、私?

「陽菜乃、起きたのか?」

瑛ちゃんを起こすつもりはなかったのだが、起きようとして失敗したが為に結果的に起こしてしまった。

「ごめんね、瑛ちゃんも疲れてるのに起こしちゃったね」

「そんな事は気にするな。それよりも、陽菜乃……、立ち会えなくてごめんな。お疲れ様、こひなを産んでくれてありがとう」

瑛ちゃんは申し訳なさそうに謝った。その後、私の右手を両手で握りしめながら、額につけて項垂れる。

「いいの、病院内に居る瑛ちゃんは私だけの人じゃないから。それにね、出産は壮絶過ぎて、立ち会いされなくて良かった。恥ずかしいもん……。あのね、腰が痛くて自分一人では起きれないの。手を貸して?」

「分かった。ゆっくり起こすから、痛かったら言って」
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