遊川くんは我慢ができない⚠
「ずっと俺のことだけを見てたらいいのに」
「え?」
周りが痛いほどにさわがしい中で、静かに声が落ちた。
そこには遊川くんに似合わない切なげな色が滲んでいたから、私は耳を疑った。
「だって、りっちゃんは俺が妬きそうになるくらいみんなに優しくするし。笑いかけてんのとか頼られてんのを見たときとか、相手が女子でも“俺のなのに”って割って入りたくなる」
「そんなこと思ってたんだ……?」
「うん、俺ってけっこう心がせまいの」
開き直りながら、というよりもどこか自嘲気味な遊川くん。
明るくて自由で、キラキラした男の子だと思ってた。
それが、実はほの暗い部分もある人なんだって。
遊川くんの素の部分に触れられたような気がして、ほんの少し浮足立ってしまう。
だけど、遊川くんが大人しかった時間は、たった1分にも満たなくて。
「りっちゃんはよく笑顔をばらまいてるけど、ほっとしたみたいな笑顔は俺にしか見せないよね」
零れた本音を隠すみたいに、にこっと笑いかけてきたかと思えば。
「……言われてみれば、そうかも?」
「俺にだけ無防備なの、すっごくいい」
ちゅって。
ほんの一瞬、唇にやわらかいものが触れた。