遊川くんは我慢ができない⚠
ダンボールに詰めてきた食材を見てテキトーに用意した相手の分のお昼ごはんは、とっくの前に冷めていて。
……私の夜ご飯にしちゃおう。
男の子の胃袋をつかむには手っ取り早いと噂の肉じゃが。
早く仲良くなりたくて誰もが好きそうなおかずを作ってみたんだけど、必要なかったかな……。
やけに冷たく感じるそれを温めるために、電子レンジへ入れようとしたそのとき。
「初めましてこんばんは! 遅くなってごめんなさい! 遊川朝飛です! どうぞよろしく!」
派手に扉が開いたと同時に、勢いのある自己紹介が玄関先からリビングまで届いた。
キッチンにいる私に遊川くんの姿は見えない。
もちろん、遊川くんからも私の姿は見えないから……初対面、失敗?
いや、対面に失敗もなにもないかもしれないけども!
「あれ? 誰もいない? ……あ」
ずんずんと大股でリビングへ入ってきた遊川くんと、一旦手に持っていた器を棚の上に置いた私。
お互いがお互いを瞳に映したのは同時だった。