オタクな俺とリアルな彼女。
キモオタのリア恋勢な俺。
現在,23時。
俺こと,水無月 薫はイヤホン完備&スマホを握り締め,冷たい画面を一心に見ていた。
『彼氏がよそよそしい気がする? 幼馴染みだと言う女子とは仲がいいのに?』
耳に響く,心地よい声。
美人 丸に近いメガネ 黒髪ロング デカイ胸 口元のホクロ ハスキーな声 そして酒好き。
俺ら"リスナー"が得られる情報は,そう多くない。
それでも"彼女"にリア恋してしまったのが,何を隠そう俺だ。
なんなら,彼女の配信を見ている男は大抵そうだと思う。
世の中男なんてそんなもんだ。
こんだけ美人で,賢くて,時間を共有できる人なんて……
ゲーミングチェアに胡座をかいて座る彼女を眺める。
あー,くそ。
黒のタンクトップに短パン。
無防備な格好で酒の缶を回している彼女は,静かに考えているのだと瞳から分かった。
やがて思考が纏まったのか,缶をぶら下げながら口元まで上げ,「ふむ」と言う。
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