オタクな俺とリアルな彼女。
折角生で逢えて,10秒20秒を越えていられるのに……!

そのネットの住民に踊らされた挙げ句,論破されるなんて早くも泣きたくなってくる。



「で,君,名前は?」

「あへ?!」



癖,なのだろうか。

じっ…と相手の目を見つめるのは。



「何を驚いている。一方的に名を知られるなど,フェアじゃない」

「そっそうですねっ」

「……まずはそのキョドるのをやめろ。そもそも突然話し掛けて来たのは君の方だろう。私は何も君を脅している訳じゃない。確かに私の顔は威圧的かもしれないが,それは君にそんな態度を取られる正当な理由には……」

「違っ!! 突然で,混乱して…っすみません,あまりに可愛っきれっかわい……っ?!!?」



どっちで伝えたらいいんだ。

伝えていいのか?!

やばい,ほんとにいる,目の前に!

なんで。

や,それはもう解決した!



「もう,いい。分かった」



右腕を身体と平行に置いていた彼女は,その手のひらをグーに変えて,唇を結ぶ。

そして不機嫌そうにもう一度



「で,名前は?」



と尋ねた。
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