オタクな俺とリアルな彼女。
先輩への恋心。
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「先輩。誰かのためにつく嘘なら,赦されると思いますか?」
こんなことを聞くのは,リスナーとしては何だかずるく思えて。
今まで俺がしてきたのは,もっと日常的で簡単な質問だった。
でも俺にとってのこの後の言葉が,少しでも軽くなるようにと,つい尋ねてしまう。
「……何だ,だまくらかしたい相手でもいるのか?」
俺は曖昧に笑って誤魔化した。
他でもない,あなたにです。
その弱い微笑みに,先輩もそれ以上詮索しない。
「誰から見て,その人の為なのか。……情報が少なすぎる上に,内容によるな」
珈琲から口を離した先輩の,突き放すような言葉にも,俺はまぁそうですよねと笑う。
そんな俺を先輩は瞳に写さず,まだ考えている途中だった。
「だが,もしその嘘を扱うのが君であるならば,間違いは少ないのだろう。君は他人の"感情"を何より優先しそうな男であるから,独り善がりなきっと起こらない」
先輩自身も気付いていないような,静かな笑み。
それほど自然な表情に,俺は見惚れた。
「でも,つかなくてすむ嘘なら,それに越したことはない。沈黙や本音のみを使って,誤魔化せばいいのだから。それならば相手の勘違いで済む」