オタクな俺とリアルな彼女。
でも,これは口にしなければ伝えられないこと。
俺は1つ笑って,敢えて少し置いてから口を開く。
これが嘘だと,質問から繋げられては困るから。
「先輩,俺が最初に言ったこと,憶えてますか……?」
「……質問の意図がよく分からないな。君が私のリスナーであったということだろう?」
「違います。先輩に,好きだと告白したことです」
ビクリと肩を揺らし,戸惑うように唇を震わせた先輩。
またぎゅっと握られた拳に,ふいっと顔をそらされる。
「私の記憶力が,そんなに悪くなった覚えはない。…………それとも,この状況が思わせ振りで,配慮に欠けていたと……」
「そうじゃ,なくて」
良かった。
忘れていたら,それは少し心に響いただろうから。
遮った俺を,先輩は訝しげに見上げて,じっと見つめた。