オタクな俺とリアルな彼女。
休日ー井上いづみsideー
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「い~ずみ~? なぁんでそんなに不機嫌なの?」
休日の,一人暮らしの自宅。
私は,モカでくるくるとしたミディアムな髪の女に抱き付かれていた。
「……離れろ,それに私は不機嫌なんかじゃない」
お洒落でどこへ行っても男女にモテる。
性格も私とはまったく違う彼女は,高校生の頃から私にくっつき回っていた,物好きの困った友人で。
「ん~,恋?」
てへっと効果音の付きそうな彼女の声。
何故かその一言にズキッと胸を刺され
「ふざけるな」
ごうっと背後が焼かれるような感覚に落ちた。
「あらら? いづみちゃ~ん,私にそんな事言ってもいいの? 生まれた時からの,両親に貰った大事な名前をあげた上に,休日にもこんなお手伝いをしてあげてるのに?」
それを言われると,今は弱い。
「はぁ……分かったからニヤニヤするな。全部お前の勘違いだから……奏」
氷室 奏。
私の数少ない友人は,誰よりも掴めない人間だ。