オタクな俺とリアルな彼女。
1年後のとある夜のお話。
夜になると,すっかり安定しきった彼女の配信が始まる。
しかし今日は一味どこかが違った。
いつも通りの顔をしているのは,配信主の"氷室奏"だけ。
ずっと今まで突き通してきた彼女の服装が変わったことに,初見いがいの全てが気がついた。
黒のタンクトップに短パン……それが。
『……上着,どうしたんですか。どこか体調でも』
周りの反応など既に予想済みの彼女は,わざわざ丁寧に読み上げる。
そしてふと軽く笑った。
『とある人間にどうしてもと頼み込まれてな。上着を羽織ることで妥協して貰ったんだ』
彼女の少し照れたような,珍しく他人に譲ったような話し方。
阿鼻叫喚と興味歓喜でコメント欄はたちまちめちゃくちゃに。
『あぁもううるさいな。これ以上は黙秘させて貰う』
そこでいい加減恥ずかしくなった彼女は,配信を無理やり進める。
動揺した彼女に,初めてその日の配信はぐだぐだと終わっていった。