オタクな俺とリアルな彼女。

リアルな彼女。

首が痛ェ。

普段配信をがっつり長時間見ているからか,講義が終わった後の感想はいつもこれ。

まだまだ家には帰れないと言うのに。

奏さんのクールな言葉で激励されたらまた別なんだろうけどな~。

ゴキゴキとなる首に嫌気がさす。

あくびで視界が歪んで,俺はカフェへと向かった。

いつもは学食へ直行だけど,今はコーヒーでも飲まないとやってけそうにない。

久々に……がちで寝みぃ。

オシャレな空間をとんとんと歩く。

慣れないものの,悪くない。

割りとすぐに馴染めそうだった。

目を擦って,顔を上げて。

前を向いた時。

俺の視界が,大きく開けたような気がした。

空間全ての時間を支配したように止まって見えて,音の一切が,俺の世界から一瞬の間だけ消えた。

長く下ろされたさらさらの髪。

表情の乏しい利発そうな顔。

大きな瞳を縁取る黒い丸メガネ。

そんな,まさか。

だって。

単語ばかりが頭に浮かんで,文になる前に消えていく。

心音が,呼吸が,歩調が。

どんどんどんどん早くなって。

徐々に見えてくる,口元の小さなホクロ。

自身に近づいてくる気配を感じたのか,ぱっとその女性が俺を見た。

< 6 / 47 >

この作品をシェア

pagetop