オタクな俺とリアルな彼女。
「~っ奏,さん!!!!!」



なんて呼べばいいのかなんて分からなかった。

氷室奏が本名である。

そのネット民達を信じて,いや,すがって。

俺はありったけの声で叫んだ。

レジで商品を受け取るところだったらしい彼女は,その声量に一瞬目を丸くして。

次に怪訝そうに俺を見つめた後,ぎゅっと眉を寄せた。

言葉にするなら,そう。

なんだこいつ,みたいな。

とろけたチーズとハムが挟まったパン,そしてカフェラテ。

視線を店員に向けた彼女は,一言発してそれらを受け取る。

ベージュのトップスに薄い黒の羽織,そして同じく黒い色のパンツ。

この人ほど黒の似合う人を,他には知らない。

すらりと立つ彼女はやはり,俺よりも身長が高かった。

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