オタクな俺とリアルな彼女。
「まず,私は奏などと言う名前ではない。井上いづみ,3年だ」



奏さんの,本名…

感動で身体が震える。

驚きすぎて,一音も発せない。



「すみ,ません…俺,いつも……奏…」



ぱっとまぶたを持ち上げて身体を引いた彼女が,パンを脇に挟んで俺の手を掴んだ。



「!?」



ふ,触れ…っ

って,え? やっぱり生きて…本物?



「……着いて来たまえ」



ぐいぐいと,よろけそうな程早く彼女は歩く。

それ以上の説明はなく,彼女は前だけを見ていた。

井上いづみ……

俺,聞いて良かったのか?!
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