花を飾った君に、いつか
西野恋色の文字だけで彼が好きだと心がわめいている。
いつから私が巳夜くんのいちばんになっていたんだろう。
じゃあ、あの言葉もこの言葉も、全部冗談なんかじゃなかったんだ。恋してくれてたんだ。
勢いよく頭を下げると可憐な笑い声が聞こえる。
「ありがとうは私のほう。素敵な恋を見せてくれてありがとう」
早く彼に会いに行ってあげて。
私は走った。きっと借り物競走で、彼はグラウンドの真ん中にいるだろう。
そう思っても、泥だらけでも、走らずにはいられなかった。
凪ちゃんの姿が見えたのはスタート位置。手招きされるままそこに着いたけれど、とても前には行けない状況なくらい、人がたくさん集まっている。
ほんとに一学年だけ?と疑うほどに。
ぱん、とスターターが挙げた手のピストルが音を響かせる。
「あれ?泥落ちてないよ?なにしに行ってたのよ」
「えへ、洗うの忘れちゃった...あれ、巳夜くんって何番目?もう走ってる!?」