花を飾った君に、いつか

冬の巳夜くんも素敵だったけど、春の巳夜くんも予想していた以上に良くて、なんとか目に収めようとする。



「見すぎ、穴あく」


「巳夜くんの面積減るのはだめ...今日も生きててくれてありがとう...」


「はいはい」



色々聞きたいことはあるけれど、荷物を置いてすぐ体育館に集合することになっている。



とりあえず、と荷解きはあとにして玄関で待つ巳夜くんのもとに急いだ。



...私はわかっていなかった。巳夜くんがどんなことを考えていて、どんな視線で私を見下ろしているのか。



わざわざ玄関で待ってくれていた巳夜くんにありがとうを言い、新しい上履きに足を入れようとした時だった。



「ねえ、恋色」



そう呼んで私の目線までかがむ巳夜くんは、あと1センチ、くっつく距離で顔を近づける。



うわあ、顔整ってる〜...



推しとファンの距離は詰めすぎてはいけない、暗黙の了解を破ってしまった私は一歩下がる。



逃げ道を無くすように、腰へ控えめに手が当たった。



「青春、したいんでしょ?
───じゃあ、恋色ちゃんは俺に恋しようね」
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