花を飾った君に、いつか
「恋色、はやくぎゅってして」
「ひえ...っ」
やるやる、やれる!
焦りで勢いで、私は巳夜くんの首の後ろに腕を回す。
ぱあん!
風船が割れる音はドキドキでかき消された。割れたことに気づかない私の代わりにひらひら舞って落ちた紙を拾う巳夜くん。
「パートナーのことをどれくらい好きになりそうですか、だって」
「それはもちろん、地球をはみ出すくらい!......はっ」
しまった、いつも通り好き好きアピールしちゃった...!推しと恋は違うって!
ふ、と片手で口元を隠しながら笑いを零すような姿に、きゅんと胸が弾むのがわかる。
大きめなニットの袖口から出る手は、落ちている風船ではなく私のほうに伸びた。
「じゃあ俺もそのくらい好きになる」
頭を撫でる手が優しい。
彼の言う「そのくらい」が地球をはみ出すくらいってことに気づいた私は赤い顔を両手で隠した。
巳夜くんが言っているのは、友達とかそういうのじゃなくて───恋って名前の心の部分、だったりしますか?