木曜日は立ち入り禁止。
お母さんは少し手を震わせながら藤くんの目を見て、訴えかけるようにこう言った。

「でもごめんね、余計なことはしないで。もし部活に付き合ってもらうんなら、もっと早い時間に終わらせて。美空琉、あなたもね」
「お母さん、藤くんは……」
「もっと早い時間に帰れば、送るなんてことも必要ないでしょ?」

お母さんの藤くんに対する態度は、嫌悪と軽蔑が感じられた。

「お母さん、何言ってるの…?藤くんは、暗いからってわざわざ送ってくれて…」
「いいよ大塚。おばさんが言いたいことちゃんと分かってるし、これからはもっと早く終わらせるようにするよ」

お母さんはゆっくりと藤くんの肩から手を下ろした。

「ごめん晴彦くん、でも」

お母さんはそれ以上何も言わなくなって、藤くんも何かすることなく

「また明日ね、大塚。おばさんも、夜遅くに家に来ちゃってすみません」

と言って帰って行った。

「……っ、お母さん!藤くんはわざわざ反対方向のこの家まで送ってくれたんだよ」
「分かってる、それは感謝してるよ」
「だったら、あんな言い方無いんじゃないの」

私は泣きそうな気持ちを頑張って沈める。

お母さんがなんでこんなに取り乱したのか、藤くんがなんでこんなに責められてたのか、藤くんが、悪くないのに謝ってたのはなんでなのか、

何が何だか分からなくて頭がこんがらがってしまう。

「ねぇ、お母さん…」
「ごめん、美空琉にとって、これが1番なの」

これが、1番って……?

「どういうこと?私にとって1番って、私が決めることじゃないの?」
「っ、美空琉は中学のあれをっ、覚えてないから!」

お母さんが声を荒らげるなんて、本当に久々だった。
中学の…あれって何?
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