木曜日は立ち入り禁止。
結局何が彼を悩ませているのか分からないまま、


放課後の時間が来てしまった。



「ね、ねぇ藤くん」
「ん?」

藤くんは返事をしながらも画材を準備している。
なーさんの彼氏やら藤くんの隠し事やらで忘れていたけれど、
今日は脚を描きたいと言われたんだった!

「ど、どうやって描くの?」
「どうやってって、鉛筆で?」

そうじゃなくて…!

藤くんはよくわからないといったふうに私を見た。

「あの、どこまで脚を見せればいいかってことなんだけど」
「あー」

藤くんは納得したように何度か頷いて、

「ここら辺までスカート上げてみてほしい」

と、彼自身の太ももの半分辺りをトントンと叩いた。

「立ってやると疲れるだろうから、座ってやろう」

藤くんはそう言うと椅子を用意してくれた。
そんなことはどうでも良くて、私は内心焦っていた。
別に脚を見せることに大きな抵抗は無いけれど、
いつも通り触るなんてことがあったら。
そして、あの「傷」を見られてしまったら。

「大塚?大丈夫?」
「……え、あうん、大丈夫」

私はゆっくりスカートを上げて手で下がらないように固定して座る。

藤くんはもうお絵描きモードに入っていた。

静かに時間が流れていく。
時計の音と、野球部の掛け声、合唱部の歌声。
藤くんは長い前髪を鬱陶しそうにしながら鉛筆を動かしている。
紙が擦れる音が心地よくて、なんだか眠くなってきた。

「……つか、大塚、起きて」

えっ、私寝てた?!

時計を見るともう18時。

見ると藤くんは私の隣に座っている。
スケッチはできたみたいで、机の上に置いてあった。

「……凄い、めちゃくちゃ上手」
「ありがと」

本当に上手で、でも私の脚じゃないみたいに綺麗だった。
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