木曜日は立ち入り禁止。
教室に戻り席につくと、りっちゃんの姿は見えずなーさんだけが座ってスマホをいじっていた。

「おかえり、何があった?」

切れ長の目をさらに鋭く光らせるなーさんに私は慌てて答える。

「な、何も無いよ、大丈夫」
「…ほんとに?」
「ほんとほんと!」

ふぅ、とため息をひとつついてなーさんはまた1つチョコのラッピングを取った。

「先に美術室に向かったのはみくるなのにあいつは1人で帰ってくるし、2人がいない間に藤が美術室向かうし…、カオス状態に巻き込まれてるんかと思ったよ」
「あぁ…、なるほど…」

やっぱりなーさんは鋭いなぁ…。
ていうか、りっちゃんはどこに行ったんだろう。

「あーりつなら生徒指導呼ばれて帰ってきてないよ」

私の表情がバレバレだったみたいで、なーさんはすっと答えを出してくれた。

「え、生徒指導……?!」
「そ。私と比べてりつはスカートとか制服とかのチェックに引っかかる回数が多いからね。今頃怒鳴られてるんじゃん?」

佐藤と一緒に、ね。

なーさんは含んだように笑いながらチョコをひとくち。

佐藤くんと、一緒に?

「え!佐藤くんと2人で呼ばれたの?」
「そう、りつめっちゃ嬉しそうに出てったよ」

わぁ…
りっちゃんほっぺた緩みながら指導聞いてそう…
なんだか私まで嬉しくなって少し笑ってしまった。

「ところでさ、来週の木曜日りつとお茶しないかって話が出てるんだけど、みくる都合良い?」

りつが恋バナ女子会したいんだってさ、となーさんはカレンダーアプリを開いた。

来週の
木曜日かぁ

藤くんの「モデルをして欲しい」っていうお願いが本気なら、行けない。
でも、あの時私の責任感を吹き飛ばすために突拍子もない冗談を言ったって可能性もあるし……。

「大塚」
「ぅわっ!」

驚いてパッと振り向くと、藤くんが立っていた。
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