真面目な鳩井の、キスが甘い。
「ん、日向」


 体育館に入ってすぐ、美愛と遭遇した。


「いいとこに来たねー。おもしろいことになってるよ」

「?」


 美愛が顎で示した先に、ボールを両手で持ち真剣な表情をした晴翔がいた。


「行くぞ、鳩井……!」


 晴翔の、これから戦地行くの?というくらいの本気の呼びかけに、晴翔から数メートル離れた鳩井がコクリと頷いた。


「せーのっ!」


 晴翔がポーンと鳩井にバスケットボールを投げた。

 その軌道は優しく、五歳児でも取れそうな球筋。

 それを鳩井が、これまた真剣な目で、取った。


「っ…、」


 そして、


「「「ぃやったぁぁぁぁ!!」」」


 体育館、大歓声。


「よくやった鳩井ー!!」

「やればできるじゃねぇか!!」

「NBAも夢じゃねぇな!」


 鳩井に駆け寄ってハグし、次々ハイタッチしていく男子たち。

 晴翔が鳩井の肩に手を置いて涙ぐんでいる。

 そのお祝いムードは今にもみんなで鳩井を胴上げしそうな勢いだ。

< 101 / 320 >

この作品をシェア

pagetop